人生における道徳的なジレンマ。それは古今東西、あらゆる文明に存在する普遍的なテーマです。正しい行動とは何か?一体どうすれば幸福な社会を築けるのか?これらの問いは、私たち人間が永遠に挑戦し続ける課題と言えるでしょう。そして、その答えを探求するために書かれた書籍の一つが、マイケル・サンデル教授による「Justice: What’s the Right Thing to Do?」です。
サンデル教授はハーバード大学で政治哲学を講じる名物教授として知られています。彼の授業は常に満席となり、学生たちは彼の鋭い洞察力と魅力的な語り口に魅了されています。「Justice」はその授業を基にまとめられたもので、複雑な倫理学の問題を、分かりやすく、そして時にユーモラスな表現で解説しています。
本書の構成
「Justice」は全12章から成り立っています。各章は具体的な事例や物語を通して、道徳的な問題提起を行い、読者自身が考えを深められるように設計されています。
章 | タイトル | 主なテーマ |
---|---|---|
1 | What Is Justice? | 正義とは何か、その定義について考察する |
2 | The Experience Machine | 幸福と自由のトレードオフ、本当に幸せな人生とは何か? |
3 | Utilitarianism | 最大多数の幸福を目指す功利主義について解説する |
4 | Libertarianism | 個人の自由と権利を重視する自由主義について考察する |
5 | Egalitarianism | 均等主義、社会的不平等に対処する方法は? |
6 | Distributive Justice | 社会における資源や財産の分配はどのように行われるべきか? |
7 | Affirmative Action | 差別是正のための積極的措置、その是非を議論する |
上記の表は「Justice」の構成の一部を抜粋したものです。
サンデル教授の哲学
サンデル教授は、「正義」という抽象的な概念を、日常の出来事や具体的な事例を通して理解しようと試みています。例えば、
- 飛行機の墜落事故で、生存者を選ぶ際にどのような基準を用いるべきか?
- 富裕層の子どもが優遇される教育制度は是正すべきか?
- 動物実験は倫理的に許されるのか?
といった問いを投げかけ、読者に様々な視点から考えることを促します。サンデル教授自身は特定のイデオロギーに囚われることなく、様々な哲学的立場を提示し、読者が自ら結論を導き出すことを重視しています。
「Justice」の魅力
本書の魅力は、単に倫理学の理論を解説するだけでなく、読者自身が思考と議論に参加できる環境を提供してくれる点にあります。サンデル教授の巧みな語り口と、豊富な例示により、複雑な哲学的問題も親しみやすく理解することができます。また、各章末には考察問題が設けられており、さらに深く考えを深めたい読者には最適です。
「Justice」は、倫理学に興味のある人だけでなく、社会問題に関心を持つ全ての人にとって有益な一冊と言えるでしょう。私たちの世界は常に変化し続けています。そして、その変化の中で、新しい倫理的な課題が生まれてくることは避けられません。サンデル教授の「Justice」は、そのような時代を生きる私たちに、考えること、議論すること、そして自分自身の正義観を見つめ直すことの大切さを教えてくれるでしょう。
生産上の特徴
「Justice: What’s the Right Thing to Do?」は、2009年に出版されたもので、日本語版も発売されています。ハードカバーとペーパーバックの両方があり、文庫版も出ています。また、オーディオブックとしても販売されているので、通勤時間や家事などをしながら聴くことも可能です。